映画『ノルウェイの森』を観てきました

公開日:  最終更新日:2014/07/23

ノルウェイの森
映画『ノルウェイの森』を観てきました。
私は村上春樹さんが好きなので、3日前からレディースデイに予約を入れ、前日までに原作を読み返し、たいそう楽しみにしていました。

以下、ネタバレ含んだ感想です。

キャスト

だいたいのキャストが原作のイメージ通りでとても良かった。

松山ケンイチさんのワタナベは原作から抜け出てきたみたい。逆に、映画中に「これは本当に松山ケンイチなのか?」と考えてしまって邪魔なほどでした(笑)
観に行く前に、映画告知で演技していない彼をたくさん見ていたから、余計に。

緑がかわいい。キュートでみずみずしくって、いつまでも見ていたいような女の子。60年代のファッションもよく似合ってかわいかった♪
キズキ、永沢さん、ハツミさん、突撃隊もイメージ通りでした。

直子役の菊地凛子さん。申し訳ありませんが、そもそも直子にしては年がいきすぎているのと線が太すぎる気がしていました。
最初の方は透明感が出ていて直子っぽく、特に話し方が素晴らしかったし、かわいかった。演技はすごい。が、やはり要所でルックスへの違和感が。

特に後半、直子の病が進んで重い女の子になっていく。それでも魅力的であり続けるには、原作設定の美少女ぶりが必要な気がします。身も蓋もないようですが、人間ってそんなもの。

レイコさんは、あまりに女らしすぎた。これは役者さんの力量というより原作解釈の違いかと。

ストーリー

原作を読んでない人が見るには無理があるだろうと思います。
私は原作を読み過ぎているし・観に行く前にもばっちり読み返して行ったので、正しい判断はできません。すみません。

セリフの多くがそのまま使われていて、違和感もないのにはびっくり。すごいよ。

最初のシーンが、原作ではあまり細かく描かれていなかったあの場面からだったのには、驚いてテンション下がった。
しかし考えてみると、あそこをしっかり書いたことで、その後の直子とワタナベの苦しみに説得力が出た。

突撃隊は、あの程度なら出さなくていい気もしたけど、いないとさみしいので原作ファンサービスでよかったと思います(笑)

原作との違いというか私との解釈の違い

ノルウェイの森
歩くの早すぎ
確かに、ワタナベと直子はよく歩きながら話をするという設定だけれど、「早足」だったっけ?

再会した初回はそうかもしれないけれど、その後は長い距離を頻繁に歩いているというだけで、自然に話ができるくらいのスピードかと。
ずっと、ワタナベが頑張らないと追いつけないような、息が切れてしまうような速さなのは不自然でした。

緑の家で、緑とワタナベが歩きながら話すのも落ち着かなかった。家の中ですよ?君たち何してるの?

やりすぎ
小説にも性的な描写がたくさん出てくる。どれも大事な場面だから、他のことを削る結果、割合が多くなってしまうのは仕方ない。

でも、療養所で直子と途中までやるシーン。あれは違うだろー。

直子は精神的な病を抱えていてセックスができないという設定。それなのに、あんな・・。
ねえ、できないというのは感じないという意味なんじゃないんですか?肉体的にできないだけなら、別にどうとでもなるだろうよ。けっ。(ガラ悪くなってきた)

レイコさんとやるとこ
最後のやるとこ、なんなの、あれ!?
あれはお葬式、二人で直子の喪失に区切りをつける行為なんです。

なのに、ワタナベが、レイコさんが社会に出るための手助けをする意味になってしまっている。しかも彼女から頼まれて仕方なく。ひどい。

『ノルウェイの森』は三角関係の話。恋愛はもちろん、死を含んだ三角もあって。
死者を共有する三角が、キズキ・直子・ワタナベから直子・ワタナベ・レイコさんになる。
キズキの死を直子とワタナベが共有したように、直子の死をワタナベとレイコさんが共有するところが大事なのに。

療養所でのシーンでも、レイコさんの存在が薄い!
そのため、療養所に行けば二人きりで好きに過ごせたように見えて、不自由な感じも薄れてしまった。

泣きすぎ
直子を失ってからのワタナベの泣き方。ていうか描写!!
感情を出しすぎている。
大きな悲しみを受けると、人は感情が出せなくなる。直子もそうだった。

世界との間に膜が張られて、うつろで、自分がどこにいるかもわからず。それがラストのセリフにつながるのに~。

まあ、世界中で公開されるのだろうから、海外向けにああいう表現になってしまうのかも。

ラストシーンの場所
あの場所でラストのセリフを言うのは、いくら松ケンの演技が素晴らしくても最大のボケに見える。

直子の髪
細かいことですが、療養所に入ってからの直子の髪は、おかっぱを長くしたような長さだと思っていた。

全体的な感想

なんだかんだ言いつつ、かなり原作に迫れていた。だからこそあちこちに違和感を感じたのだと思います。
映像がとても綺麗でした。療養所のまわりの緑。草原。

60年代の雰囲気が興味深かった。
インテリアやファッションもかわいくて、見ていて楽しかったです。

今回、映画を観て改めて原作について感じたこと。
『ノルウェイの森』は村上春樹さんの中では100%リアルという異質な小説ですが、療養所(あちら側:死)と東京(こちら側:生)という二つの世界を行き来するという意味では、やはり春樹さんらしい作品だと思いました。

観る価値があるかないかは、私にはわからない。
私は原作が好きで、「観ないわけにはいかなかった」から。

正直、観ていたときはクライマックスに入り込めず、映画館を出たいとさえ思った。
でも、こうして感想をまとめていると、あの美しい世界をもう一度見たいような気がする。

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